#ジャンル:SF
#トーン:哀愁
#登場人物:天文学者
リオが初めて「星喰い」を目にしたのは、崩壊寸前の赤色巨星を観測しているときだった。巨大なガスの渦が崩れ、閃光が宇宙を照らす中、星の残骸から現れた黒い影。それは生物なのかエネルギーの塊なのか分からない。だが、彼女の研究で「星喰い」と呼ばれるその存在が、星の寿命の終わりに現れるという法則が明らかになっていた。
「どうして君たちは星を喰らう?」
リオは問いかけるようにモニターを見つめた。その夜、彼女は夢の中で答えを知ることになる。
夢の中、リオは「星喰い」の視点に立っていた。冷たい真空を漂い、死にゆく星へと向かう。星の表面に触れると、光が溢れ、無数の記憶が流れ込んできた。星が誕生し、燃え盛り、数十億年にわたるその営み。そこには、惑星に住む生命たちの歓喜や苦悩も含まれていた。
目覚めたリオは、心の中に何かが刻み込まれていることを感じた。星喰いはただ星を破壊するのではない。それらを記憶し、どこかへ運んでいるのだ。そしてその記憶は、宇宙そのものが成長するための糧になるらしい。
数週間後、リオは同僚の反対を押し切り、無人探査機を送り込んだ。探査機は星喰いの行動を追跡し、その軌跡を明らかにした。彼らは記憶を宇宙の果てへと運び、新たな星の種を撒いている――その事実にリオは震えた。
だが、発見が世に出る前に政府が介入してきた。星喰いは「危険な存在」とされ、人類の安全のため排除すべきだと主張された。リオは選択を迫られた。この研究を隠すか、すべてを公表して人類が宇宙の意思に立ち向かう道を選ぶか。
彼女は静かにコンソールを操作し、データを全て公開した。星喰いを殺すことは、宇宙そのものを否定することになるのだと理解していたからだ。
数年後、星喰いと人類の関係は新たな段階に入っていた。星の死は恐怖ではなく、宇宙の巡礼として認識されるようになった。リオは最後に見た夢を思い出す。そこには、無数の星々の記憶と共に、新しい光が生まれる様が映っていた。
そして今、彼女はその光を見上げ、未来を信じて目を閉じた。