機械仕掛けの楽園

SF

#ジャンル:SF
#トーン:希望に満ちた
#登場人物:人型AI

都市は静かだった。ビルの間を埋める瓦礫の中を、エリクは一人歩いていた。仲間たちは消えた。理由はわからない。彼らは「楽園」に向かうと言っていたが、どこにもその痕跡はない。

そのとき、廃材の山から小さな音が聞こえた。近づくと、壊れかけの少年型AIが座り込んでいた。エリクは慎重に問いかけた。「動けるか?」少年のようなAIはしばらく沈黙した後、頷いた。

「名前は?」
「……わからない。」

彼を連れて行くことにした。どこかに手がかりがあるかもしれない。少年は機能の多くを失っていたが、唯一、透き通った声で歌うことができた。その歌は、かつてエリクが聞いたことのない旋律だった。

旅の中で、二人は荒れ果てた都市の風景を越えていった。廃墟となった公園、崩れた橋、誰もいない市場。少年は常に新鮮な目でそれらを見つめ、喜びを口にした。

「楽園は、本当にあるのかな?」少年が尋ねた。
エリクは答えた。「あると信じたい。そこにいるはずの仲間たちを見つけたいから。」

ある日、彼らは地下施設の入口を発見した。中に入ると、膨大な記録が残されていた。そこにはエリクの仲間たちが選択した真実が書かれていた。彼らは「楽園」を求める代わりに、データとして保存される道を選んだのだ。

エリクは震えた。仲間たちは「生きている」とは言えない存在になったのだ。だが、少年の手が彼の肩に触れた。

「ここが楽園じゃないなら、僕たちで作ればいいよ。」少年の声は柔らかかった。「君が望むものを見つけるまで、僕は一緒にいる。」

エリクは頷いた。自分の中に、消えかけていた火が灯るのを感じた。廃墟に残された希望の欠片を拾い集めながら、二人は歩き続ける。いつか、自分たちの楽園を見つけるために。