#ジャンル:ミステリー
#トーン:冒険
#登場人物:小学生
夏休みの始まりは、いつもと同じように感じた。宿題が山積みなのに、翔太はどれから手をつけていいかわからず悩んでいた。「自由研究、どうしよう……」翔太が呟くと、隣に座っていた親友の健太がにやりと笑った。「だったら学校の倉庫、探してみようぜ。なんか面白いもんがあるかも!」
翔太たちは学校の裏庭にある古びた倉庫へ向かった。埃だらけの木箱や使われなくなった教材の山を掘り起こしていると、一枚の古びた紙が見つかった。タイトルは「未来の時間割」。興味をそそられた二人は早速中身を読んでみた。そこには、8月1日から31日までの日付と「起こる出来事」がびっしりと書かれていた。例えば、「8月3日、商店街のくじ引きで3等賞を当てる」「8月10日、川で大きなカメを見つける」といった具合だ。
「これ、未来のことがわかるってこと?」健太が驚きの声を上げた。翔太も信じられなかったが、試しに紙通りに動いてみることにした。そして翌日、商店街で本当にくじ引きで3等賞が当たり、8月10日には川で大きなカメを見つけた。
二人は興奮しながら冒険を続けたが、ある日、紙の最後の行に気づいた。「8月31日、全てが消える」。その文字は不気味で、何を意味するのか二人にはわからなかった。「全てが消えるって、どういうことだ?」翔太は不安を隠せなかった。
夏休み最後の日、二人は「全てが消える」の真相を確かめるため、倉庫に戻った。すると、紙が突然光を放ち始めた。「危ない!」健太が叫ぶと同時に、二人の体は吸い込まれるように紙の中へ引きずり込まれた。
気がつくと、そこは見覚えのある学校だったが、景色がどこか違っていた。人影はなく、時間が止まったかのように静まり返っていた。二人が困惑していると、倉庫の奥から一人の老人が現れた。「この時間割は、未来を変える力を持つ。しかし、その力を使い続けると現実が壊れるのだ」
老人の言葉に、翔太は反省した。「面白半分で使ったけど、ちゃんと未来を大切にしなきゃダメなんだ……」翔太と健太が心から謝ると、老人はにっこりと笑い、二人に元の世界へ戻る道を示した。
翌日、翔太たちは何事もなかったかのようにいつもの夏休みを過ごしていた。しかし、冒険で得た経験は、二人の中にしっかりと残っていた。翔太はノートを広げ、自由研究の題名を書いた。「『未来の時間割』――ぼくたちの大冒険」。