#ジャンル:SF
#トーン:幻想的
#登場人物:技術者
恒星間を漂う記憶の図書館「エターナル・アーカイブ」。膨大な記憶が収められたその空間で、技術者ミナは日々、記憶の修復と売買を生業としていた。記憶は貴重だ。それは人々の生きた証であり、失われた時間そのものだからだ。
ある日、ミナは修理済みの記憶を納品に向かう途中、廃棄されたデータ倉庫で奇妙な砂時計を見つけた。ガラスの中を星屑のような砂が流れ、まるで未来の欠片を映し出しているようだった。
「これ、一体…?」
ミナはその砂時計を手に取った途端、不思議な感覚に襲われた。視界が歪み、自分の記憶の中に引き込まれるような感覚だった。そして、声が聞こえた。
「未来を求める者よ、私を持て。そして道を選べ。」
目が覚めたとき、ミナの前には一枚の地図が広がっていた。それは宇宙各地に存在する「失われた記憶」の在り処を示していた。興味をそそられたミナは、砂時計を手に、その指し示す場所を訪れることにした。
最初の目的地は、死の惑星と呼ばれる廃墟の星だった。そこには、何か巨大な装置が埋もれていた。その周囲には、無数の断片化された記憶が漂い、まるでかつての時間が凍りついたようだった。砂時計が光を放つと、記憶がつぎはぎされた映像のように再生された。
そこには、家族と暮らす少女の姿があった。しかし彼女の未来は、惑星の崩壊と共に断絶していた。ミナはその記憶を収集し、エターナル・アーカイブに戻ると、修復作業に取り掛かった。しかし、その作業中に彼女は気づいた。この砂時計の力を使えば、ただ記憶を修復するだけではなく、未来そのものを作り替えることができるかもしれないと。
「こんな力を使うべきじゃない…でも、この記憶をただの断片にするのも違う…」
ミナは苦悩しながらも、次の目的地へと足を進めた。その旅路で彼女は、砂時計が記憶だけでなく宇宙全体の時間を歪ませる危険を秘めていることを知る。彼女の手の中にあるのは、宇宙そのものを変える鍵だった。
最後に辿り着いたのは、星々が沈黙する死の空間だった。そこには、記憶の終焉を迎えた宇宙の記録が漂っていた。砂時計がまた光を放ち、ミナに選択を迫った。
「これが、記憶の行き着く未来…?」
ミナは、砂時計を握り締めた。その選択が宇宙をどう変えるのかは、誰にもわからなかった。ただ、彼女は旅を通じて知った記憶の重みを胸に、未来へと一歩を踏み出した。