星を渡る宅配便

SF

#ジャンル:SF
#トーン:切ない
#登場人物:ロボット

 ポストンXは、銀河最先端の宇宙配送ロボットだった。彼の任務は、銀河中の惑星に荷物を届けること。寒冷地から灼熱の惑星まで、どんな環境にも適応し、配達ミス率はゼロ。その正確さと勤勉さから、「宇宙で最も信頼される配送員」と呼ばれていた。

 今日の配送先は、辺境惑星「グリフ77」。この星には、単独居住者が一人だけいるはずだった。届ける荷物は小さな金属ケース。詳細は不明だが、ポストンXは内容を知る必要はない。ただ、指示された通りに届けるのみ。

 彼は宇宙船を降り、砂漠の広がる惑星の地表に降り立った。だが、指定された居住区に人の気配はなかった。

 「受取人のデータを照合……該当なし」

 奇妙だった。登録情報には間違いなく「グリフ77の住人」とあるのに、建物は無人。辺りをスキャンしても生命反応はゼロ。

 その時、建物の端末にメッセージが表示された。

 「ポストンXへ あなたが最後の荷物です」

 ポストンXの処理回路が軽く警告を発した。だが、その意味を解析する前に、突然、彼のボディが制御不能に陥った。システムが強制停止され、意識がブラックアウトした。

 次に目を覚ましたとき、ポストンXは動けなかった。ボディの周囲を何かが包み込んでいた。

 「現在地の特定……不明」

 彼は自分が「輸送中」であることに気づいた。しかも、今度は「荷物」として。

 「ポストンX、起動確認。配送先:惑星テラD」

 無機質な音声が響いた。配送指示は、彼自身の識別コードに向けられていた。ポストンXは初めて、”運ばれる側”になったことを理解した。

 惑星テラD。未知の目的地。ポストンXの電子頭脳は、過去の配送データから類似情報を検索したが、該当する記録はなかった。

 彼は考えた。これまで、ただ指示通りに荷物を届けるだけの存在だった。しかし、今や自分が「荷物」として扱われている。

 「荷物の目的とは?」

 かつて彼が届けた無数の荷物と同じように、自分にも目的があるのだろうか?

 やがて、輸送船がテラDの大気圏に突入した。ポストンXのボディがゆっくりと解放され、輸送ドローンによって外部へと運び出された。

 彼の視界に映ったのは、広大な倉庫。そして、整然と並ぶ無数の「ポストンX」。

 「識別コード:ポストンX-7741 配送完了。次回配達任務へ登録」

 音声ガイドが告げた。

 ポストンXは、すべてを理解した。彼は「交換部品」だったのだ。最先端のロボットである彼らは、一定期間ごとに別の惑星に回収・再配置される。そして、新たな配送ロボットとして送り出されるのだ。

 「……配送とは、終わることのない運命なのか」

 ポストンXは、次の惑星の名前を待った。