#ジャンル:ファンタジー
#トーン:冒険的
#登場人物:狩人
赤い月が空に浮かび、村人たちは畏怖の念に震えていた。それは伝説の「竜の目覚め」を告げる兆しだった。アリシアは、そんな村の若き狩人だった。彼女は村を守るため、武器を取り竜退治の旅に出た。
竜が眠るとされる遺跡は、深い森の奥に隠れていた。森の中を進む彼女の頭には、幼いころから聞かされてきた竜の恐ろしい伝説がよぎっていた。竜の怒りが村を焼き尽くしたという話や、かつての狩人たちが全員帰らぬ人となった逸話。しかしアリシアは恐怖を振り払うように歩みを進めた。
遺跡の中で彼女は、燃えるような鱗をまとった巨大な竜に遭遇する。だがその竜は、敵意を向けてくるのではなく、ただ静かに語りかけてきた。
「私はこの世界を救うために目覚めたのだ」と。
アリシアは驚き、竜の言葉の真意を問いただした。竜はかつて人間と共存していたが、彼らの争いにより長き眠りについたという。そして今、人間の愚かさが再び世界を滅ぼそうとしていることを警告するため目覚めたのだと語った。
竜は続けて、かつて人間が自然の恵みを尊び、竜たちと手を取り合って暮らしていた時代の話をした。しかし、時が経つにつれ人間は欲望に駆られ、竜を敵視するようになったという。その過去を聞いたアリシアは、竜の目に映る悲しみの理由を理解し始めた。
竜との対話を通じて、アリシアはその目的が単なる破壊ではなく、自然との調和を訴えるものであると悟る。村人たちの誤解を解くため、彼女は竜の言葉を胸に村へ戻る決意を固めた。竜の瞳には深い悲しみが宿っていた。
村に戻ったアリシアは、竜の真実を語り、村人たちの恐怖を鎮める努力を続けた。しかし最初は村人たちも竜への恐怖を捨てることができず、アリシアを信じようとはしなかった。彼女は諦めず、竜が過去に村人を守った逸話や、自然との共存の大切さを説き続けた。
やがて彼女の情熱と行動に心を動かされた村人たちは、竜との共存を受け入れる道を模索し始めた。そしてアリシアの行動は、竜との新たな共生の未来への第一歩となった。村の空に浮かぶ赤い月が薄れ、新たな時代の幕開けを告げるように輝きを失っていった。