#ジャンル:ドラマ
#トーン:ノスタルジック
#登場人物:家族
浩一が祖父の遺品を整理していると、埃をかぶった古びた引き出しの中から一通の手紙が見つかった。それは1943年の日付と共に、若き祖父が書いた愛の告白の手紙だった。
手紙の宛先は「松原絹代」という名の女性だったが、浩一の家族にその名前を知る者はいなかった。興味を抱いた浩一は、宛先住所を手掛かりに、その人物を探し始める。たどり着いた先は、古い日本家屋だった。そこに住む絹代は、祖父の名を聞くなり、目に涙を浮かべた。
彼女は語り始めた。戦時中、祖父と絹代は短い時間ながらも愛を育んでいた。だが戦争の激化により引き裂かれ、手紙が届く前に祖父は戦地に送られてしまったという。絹代はその後、戦火の中で手紙を読み、涙を流しながらも新たな日々を歩む決意をした。彼女は戦争の恐怖や混乱の中、祖父との思い出だけを支えに生き続けたと語った。
浩一は彼女の語る話を聞きながら、祖父がどんな人物だったのか、家族に伝わらなかった面影を思い描いた。彼女の家で見せられた古びた写真には、若き日の祖父が微笑んで写っていた。その写真には祖父の手書きの言葉が添えられており、「再会の約束」と記されていた。絹代はその写真を大切に保管し続けていたという。
話の途中、絹代は机の引き出しから一冊の古い日記を取り出した。それは祖父と過ごした日々を記したもので、ページをめくるたびに彼の人柄が浮かび上がるようだった。浩一はその記録に目を通し、祖父がどれほど絹代を想っていたのかを改めて感じ取った。絹代は少し恥ずかしそうに微笑みながら、「この日記が、私の支えだったんです」と呟いた。
浩一は話を聞き終えた後、彼女の静かな笑顔に心を打たれた。そして、祖父が生前に何を大切にしていたのか、絹代の存在を通じて知ることができた。彼女は最後にこう語った。「あなたのおじいさまは、強くて優しい方でした。その優しさが、私の人生を支えてくれたのです。」
家に戻った浩一は、祖父の遺品として見つかった手紙を再び手に取り、家族にこの話を伝えることを決意した。祖父の思い出が、家族の絆をさらに深めていくのを感じた。祖父の心が、時代を越えてなお家族の中に生き続けていることを強く確信した。