オフィスの朝焼け

ドラマ

#ジャンル:ドラマ
#トーン:爽やか
#登場人物:会社員

「こんな時間にオフィスにいるなんて珍しいね」
背後から声をかけられ、アオイはぎょっと振り返った。そこには先輩のハルカが立っている。彼女は手にマグカップを持ち、いつも通りの落ち着いた笑顔を浮かべていた。

「ちょっと、早起きしてみようと思って」
「えらいね。新人の頃は、私もやってたなあ。早朝の静かなオフィスって、集中できるから好きだったんだ」

アオイは小さくうなずき、パソコンに目を戻す。画面にはプレゼン資料が映し出されていた。初めて一人で任された仕事。自分なりに頑張って作ったつもりだが、どこか物足りなさを感じていた。

「プレゼン資料?」
ハルカがデスクを覗き込み、首をかしげる。「ちょっと見てもいい?」

許可を出すと、ハルカは椅子に腰掛け、しばらく画面を眺めていた。
「これ、すごく分かりやすいけど、この部分をこう直すともっとよくなるよ」

ハルカはさらりとアドバイスをくれる。その指摘は的確で、アオイは思わず感心してしまう。
「なるほど……確かにそうですね」
「あと、プレゼンの冒頭でちょっとした例を出すと、ぐっと引き込めるよ」

ハルカが教えてくれたアイデアを元に資料を修正していくと、全体が明るく引き締まった気がした。アオイは満足げに画面を見つめる。

「朝早いと、こうやってじっくり考える時間が取れるからいいんだよね」
ハルカは窓の外を見上げながら言った。アオイもつられて窓際に立つと、ちょうど朝焼けがオレンジ色にオフィスを染めているところだった。

「きれいですね……こんな景色、初めて見ました」
「でしょ? これを見ると、なんか頑張ろうって気になるんだよ」

アオイはその言葉に心が軽くなるのを感じた。翌日から彼女は少しずつ早起きを始めた。朝の時間が、オフィスでの自分を支えてくれる特別なものになっていった。