灯台守と永遠の光

#ジャンル:ファンタジー
#トーン:切ない
#登場人物:青年と少女

孤島の灯台は、世界の果てのように静まり返っている。リクは、毎晩灯台の光を見上げながら、疑問を抱かずにはいられなかった。なぜこの光は訪れる者たちの記憶を奪うのか――。

その答えを知る術はない。ただ、光に魅了される者は決まって灯台を訪れ、やがて自分の名前すら忘れて去っていく。リクもまた、何度も自分の記憶が曖昧になる瞬間を感じていた。

嵐の夜、灯台の扉が叩かれた。外には、ずぶ濡れの少女が立っていた。彼女は何も話さない。ただ瞳に不安と戸惑いを宿し、灯台を見つめていた。リクは少女を中に招き、毛布を差し出した。

数日が経つにつれ、少女は少しずつ言葉を取り戻した。名前はナツ。だが、それ以上の記憶はないと言う。リクは彼女が光の影響を受けたのだと確信したが、それを告げることはできなかった。

夜ごと、二人は灯台の光を見上げた。リクは語った。「この光は、不思議なんだ。眩しいけれど、何かを奪っていく気がする。」ナツは微笑む。「でも、ここにいる間は、少しだけ幸せだと思えるの。」

やがてリクは、自分がこの灯台にいる理由を思い出した。それは光に魅了された両親を追い、この孤島にたどり着いた過去だった。そして、彼らもまた、光によって記憶を奪われたのだと。

ナツが去るときが来た。彼女は言った。「ありがとう、リク。でも、私は自分の記憶を取り戻したい。灯台を離れても、この日々を忘れたくない。」

彼女を見送るリクの胸には、複雑な感情が渦巻いていた。灯台の光は彼にとって呪いであり、救いでもあったのだ。

リクは一人、光を見上げる。「この光は、永遠に人々を魅了し、そして忘れさせる。でも、それでいいのかもしれない。少なくとも、僕はここにいて、見守り続ける。」