#ジャンル:ドラマ
#トーン:緊張感
#登場人物:漂流者
夕焼けが水平線を染めるころ、浜辺に立つリナは、穏やかな波の音に耳を澄ませていた。4日前の嵐で船が転覆し、偶然にも同じ救命ボートに乗り合わせた4人──リナ、航太、真理絵、そしてユウジ──は、この無人島に流れ着いた。
初めは誰もが協力的だった。航太は率先して食料の確保に動き、真理絵は火を絶やさず守った。ユウジは木材を集めて簡易的なシェルターを作り、リナは怪我を負った者の手当てをしていた。4人は、見知らぬ者同士であるにもかかわらず、不思議と調和していた。
だが、それは長くは続かなかった。
島での生活が5日目を迎えたころ、リナは偶然、ユウジのバッグの中に無線機を見つけた。故障しているようだったが、それがあったこと自体に驚いた。問い詰めると、ユウジはしぶしぶ口を開いた。
「俺は、この島の調査に雇われてたんだ。事故じゃない。元々、ここに来る計画だった」
その瞬間、空気が一変した。真理絵は怒り、航太は黙り込み、リナは何も言えなかった。裏切りとも思える告白が、築き上げた信頼を崩した。
そして翌日、今度は真理絵が「自分もこの島について事前に知っていた」と告白する。政府が極秘裏に研究していた島であり、何かが隠されている、と。リナと航太は混乱し、信じていた仲間に疑念を抱いた。
だが、すべてが変わったのは、その夜だった。
リナが島の奥地で見つけたのは、古びた地下施設の入口。鉄の扉は半ば開いており、中からは微かに光が漏れていた。呼吸を整え、懐中電灯を手に中へと入ると、そこには無数のモニターと通信機器、そして「被験者記録」と書かれたファイルが並んでいた。
驚いたのは、そこに4人の顔写真が貼られていたことだ。
「……私たち、最初から“選ばれて”たの?」
リナは目の前の現実に言葉を失った。
その後、4人は再び集まり、全てを話し合った。真実はこうだった。政府が開発していた極限状態での人間の心理データ収集プロジェクト。その被験者として選ばれたのが、彼ら4人だったのだ。
だが、嵐は予測外だった。計画は頓挫し、彼らだけが島に取り残された。
怒り、失望、恐怖。あらゆる感情が交差する中、それでもリナは言った。
「だからって、私たちが壊れる理由にはならない。選ばれたのが偶然だろうと、今ここで生きているのは本当なんだから」
その言葉に、誰もが沈黙した。
そして翌朝、4人は協力して地下施設の通信機器を修復し、ついに救助要請に成功した。
ヘリが島に近づいたとき、浜辺には彼らが焚いた大きな焚き火が灯っていた。かつての疑念や怒りが、そこにはもうなかった。
ただ、燃え上がる炎のように──希望だけが、そこにあった。