幽霊列車の秘密

ミステリー

#ジャンル:ホラー
#トーン:ミステリアス
#登場人物:フリーライター

夜更け、古びた線路の上を歩く男が一人。彼の名前は三浦浩二。都市伝説を愛するフリーライターだ。彼の目的は、噂に聞く「幽霊列車」を目撃し、その真相を記事にすることだった。

静寂を切り裂くように、遠くから汽笛の音が響く。廃線となったはずの線路を、霧に包まれた古い車両が近づいてくる。恐怖と興奮が入り混じる中、浩二は列車の影に身を潜め、ドアが開く瞬間を待った。

列車が停車し、彼は意を決して車内に飛び乗った。窓ガラスには不気味な霜の模様が広がり、埃にまみれた座席が並ぶ無人の車両。だが、異様なほど整然としていた。車内の隅で、一冊の手帳が目に留まった。

手帳を開くと、中には年代を感じさせる字で書かれた記録があった。日付は昭和20年8月15日。戦中にこの列車が疎開のため運行していたこと、そしてその日、大勢の乗客を乗せたまま行方不明になったことが詳細に記されている。

ページをめくると、最後にはこう書かれていた。「乗客たちの命を奪ったのは、自分の罪。許される日は来ない」。それは運転士のものらしい言葉だった。

突然、車内に鈍い音が響いた。振り返ると、朽ち果てた制服を着た男が、まるで幻影のように立っている。運転士だ――そう確信した浩二は冷汗を浮かべ、体が動かない自分に気づいた。

「君は何を求めてここに来た?」

低く響く声に、浩二は震えながらも答えた。「真実が知りたいんです。記事にして人々に伝えたい。」

運転士は目を細め、苦しげな表情を浮かべた。「それが償いになるだろうか。だが……もし書くのなら、真実をねじ曲げるな。」

気づけば列車は動き出していた。外の風景がゆっくりと流れ、気が付けば浩二は最初に立っていた線路上に戻っていた。手帳だけが彼の手に残されていた。

それ以降、浩二が書いた記事は大反響を呼び、幽霊列車の謎を解明する一助となった。ただ、あの運転士が許されたのか、彼自身も分からない。ただ確かなのは、彼が「真実」を綴ったことで、何かが変わったということだけだった。