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【短編小説】お昼寝タイム、はじまりました。

午後二時になると、真理のアラームが鳴る。「そろそろ、横になろうかな」在宅勤務になって三か月。毎日続くオンライン会議と、終わらぬ業務の山。慣れないデスクワークに肩は凝り、目はしょぼしょぼ。そんな彼女のささやかな日課が、午後の三十分だけ取る“お昼寝タイム”だった。
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【短編小説】今日のごはんは、なんにする?

朝の光がレースのカーテンをすり抜け、キッチンにやさしく降り注ぐ。真理は小さく伸びをしながら、炊飯器のふたを開けた。「んー、今日もいい匂い」隣の椅子では、3歳の息子・光が、お気に入りのスプーンをにぎりしめて座っている。
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【短編小説】月曜日のカレーライス

月曜の夕方、遥の部屋には決まってカレーの香りが漂う。一人暮らしを始めて半年。大学の近くにある、風呂トイレ別・築15年のアパートが、彼の「新しい家」になった。
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【短編小説】日向の縁側

春休みの初日、ユイは祖母の家の縁側に座っていた。母に「たまには空気の違う場所でのんびりしてきなさい」と言われて、渋々やってきた田舎町。スマホの電波も不安定で、友達と連絡を取り合うのもままならない。最初の一日は、ただ時計の針を眺めていた。
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【短編小説】カステラ、三時の奇跡

その日、美月はすっかり打ちのめされていた。中学校の中間試験、手応えは最悪。特に数学の答案用紙は、まるで知らない言語が並んでいるかのようだった。
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【短編小説】パンとラジオとおばあちゃん

まだ外が暗いうちから、小さな町のパン屋「くるみ堂」は動き出す。朝4時。店主のサキはエプロンを締め、オーブンのスイッチを入れながら、古びたラジオのダイヤルを回す。パチパチと雑音の後、AMラジオの穏やかな声が流れ始める。
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【短編小説】紅茶とクロスワード

老人ホーム「楓の里」の朝は静かに始まる。食堂の窓から差し込む光が、白いテーブルクロスに淡く影を落とす。佐伯さんはその隅に座り、湯気の立つ紅茶に口をつけながら、新聞を広げるのが日課だった。
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【短編小説】サンドキャッスルの約束

午後三時、団地の向かいの公園にある砂場。そこに、毎日きっかりの時間に小さな男の子が姿を見せる。名前はユウト、幼稚園の年中組。お気に入りの青いスコップを手に、誰よりも真剣な顔で砂と向き合う。
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【短編小説】コンビニあと、図書館まえ

朝七時五十五分。駅から学校への道の途中にあるコンビニが、ユウとサキの集合場所だった。サキはホットミルクティー、ユウはメロンパンを買うのが定番で、それを持って、学...
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【短編小説】四畳半リセットライフ

目覚ましは鳴らない。締切も、打ち合わせも、もうないからだ。岡村は四畳半の布団の中で天井を見つめた。連載は打ち切り、単行本も出ず、家賃は滞納気味。それでも、漫画家...