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ドラマ

【短編小説】ペダルの向こうへ

春の風が、頬を優しくなでていく。亮介は地図も持たず、自転車のペダルをゆっくりと踏み込んだ。大学を卒業し、就職を控えたこの春、彼は唐突に一人旅に出た。きっかけは、...
日常

【短編小説】朝の風とヘルメット

エンジンをかけた瞬間、眠気がふっとどこかへ飛んでいく。小さな出版社に勤める智は、毎朝バイクで通勤している。都心の雑多な街並みを抜け、川沿いを走り、ビルの谷間をす...
日常

【短編小説】今日も処方せん通りに

朝八時半。白衣に袖を通すと、気持ちが少しだけ引き締まる。調剤薬局「みなと薬局」の薬剤師・涼子は、開店前の店内を一巡しながら、棚の薬をひとつひとつ確認する。ピッと...
ファンタジー

【短編小説】蜜の森の約束

森は甘い香りに満ちていた。朝露をまとった草の間をすり抜けるように、黄色い羽音が響く。村のはずれに広がるその深い森は「蜜の森」と呼ばれていた。古くから、不思議な蜜...
日常

【短編小説】きょうのお買い得

木曜日の午前十時。絵理子はお気に入りのエコバッグを肩に、近所のスーパーへと歩き出す。家族が出かけた後の、たった一人の静かな時間。それが、彼女にとっての“小さなご...
ドラマ

【短編小説】潮の道しるべ

夜明け前、海はまだ眠っているかのように静かだった。真司は父の形見のゴム長靴に足を通し、小さく息を吐いた。冷たい風が頬をかすめ、潮の匂いが鼻先に染み込む。「親父も...
ドラマ

【短編小説】風を読む男

滑走路を吹き抜ける風は、いつだって何かを運んでくる。元ベテランパイロットの圭一は、飛行学校の訓練教官として、静かな日々を送っていた。制服を脱いで五年。彼はもう、...
ミステリー

【短編小説】砂に消えた足跡

朝の海は、まだ夢を見ているように静かだった。潮風に髪をなびかせながら、女子高生・璃子はいつもの海岸を歩いていた。祖母の家に一時的に預けられているこの夏、早朝の散歩が日課になっていた。
ドラマ

【短編小説】青の境界線

水平線と空の境が、まるで水彩画のようににじんでいた。エンジンの音はなく、帆に風が通る音だけが、静かに胸に響く。葵は大学を卒業した春、何の確信もなく一人、ヨットで海に出た。
日常

【短編小説】お昼寝タイム、はじまりました。

午後二時になると、真理のアラームが鳴る。「そろそろ、横になろうかな」在宅勤務になって三か月。毎日続くオンライン会議と、終わらぬ業務の山。慣れないデスクワークに肩は凝り、目はしょぼしょぼ。そんな彼女のささやかな日課が、午後の三十分だけ取る“お昼寝タイム”だった。