ドラマ【短編小説】向日葵の名前 夏の空はどこまでも高く、蒼く、まぶしかった。祖父の葬儀が終わり、陽太は久しぶりに帰郷した実家の縁側に腰を下ろしていた。蝉の声が、まるで時間を巻き戻すように遠くから響く。 2025.06.13ドラマ
ファンタジー【短編小説】糸あやつりの国 廃墟のような人形劇場は、町外れの丘の上にぽつりと残っていた。古びた木の看板には、かろうじて「アルカ劇場」と読める文字。風に吹かれて軋むその音は、まるで誰かが幕を引く音のようだった。 2025.06.09ファンタジー
ドラマ【短編小説】赤い星の下で 砂嵐の向こう、赤く沈む太陽が遺跡の影を長く伸ばしていた。カイはその風景を、まるで何度も見た夢のように黙って見つめていた。ベテランのトレジャーハンターとして、彼は世界中の失われた遺物を追い求めてきた。 2025.06.06ドラマ
日常【短編小説】月曜日のカレーライス 月曜の夕方、遥の部屋には決まってカレーの香りが漂う。一人暮らしを始めて半年。大学の近くにある、風呂トイレ別・築15年のアパートが、彼の「新しい家」になった。 2025.06.05日常
ドラマ【短編小説】星降るベランダで 遥がベランダで星を眺めるようになったのは、小説家を目指すようになってからだった。夜の空は、物語を考えるための静かなページだった。仕事から帰ってきて、インスタントのコーヒーを片手に、ノートを膝にのせて星を見上げる。それが、彼女の小さな習慣だった。 2025.05.28ドラマ
ファンタジー【短編小説】泡の国のティア ある夏の午後、ミナは庭でシャボン玉を吹いていた。光に透ける泡が空に舞い、風に乗ってくるくると踊る。ひとつ、ふたつ、と数えていくうちに、ミナは目を見張った。 2025.05.26ファンタジー
ファンタジー【短編小説】忘却の果実 旅人リオは、その日も異国の陽射しを浴びて、砂と香辛料の匂いが入り混じる市場を歩いていた。色とりどりの布、陽気な音楽、行き交う声。遠く地中海の風が吹き込むこの町には、世界のどこにもない雑多な魅力があった。 2025.05.23ファンタジー
ファンタジー【短編小説】星橋を渡る夜 七夕の夜、少女・ナギは一人、神社裏の小さな丘で天の川を見上げていた。笹飾りもない短冊もない七月の風景に、願いごとを託す気にもなれずにいた彼女は、どこか空虚な気持ちで空を見つめていた。 2025.05.19ファンタジー
ミステリー【短編小説】手紙には書かれていない 春の引っ越しを目前に控えたある日、菜月の家に一通の古びた手紙が届いた。封筒は黄ばんでおり、消印はかすれて読めない。だが、差出人欄には何も書かれておらず、宛先だけがはっきりと——「朝倉菜月様」と記されていた。 2025.05.14ミステリー