就寝前に

ファンタジー

【短編小説】流れ星の滝へ

夜空を見上げるたび、リクトは妹の咲のことを思い出す。彼女は、生まれつき体が弱かった。病院のベッドで過ごす日々の中でも、咲はいつも空を見ていた。「流れ星を見たら、お願いするの」と笑って。だが、流れ星はそう簡単には現れないし、願いはなかなか叶わない。
SF

【短編小説】銀河夜行フィロソフィア

人生が完全に暗転した夜、カイは幻の列車に出会った。都市の喧騒を離れ、失意のまま歩いた丘の上、旧天文台の廃プラットフォームにそれは突如として現れた。光も音も発しないまま、星屑をまとうように滑り込んできた宇宙列車――フィロソフィア号。
SF

【短編小説】星間特急アルクトゥルス

地球最後の夜、星間特急「アルクトゥルス」は発車した。腐敗した大気、干上がった海、崩壊した都市――かつて青く輝いた星は、今や滅びの音を立てていた。
ファンタジー

【短編小説】月影の庭で眠る

リオがその庭に迷い込んだのは、真夜中だった。町外れの森。月の光すら届かないような暗い木々の奥で、リオは道を見失っていた。親に怒られた帰り道、家に帰りたくなくて、ただ無心で歩き続けた結果だった。
ドラマ

【短編小説】SAブルース

国道沿いの高速道路サービスエリア、時刻は午前二時。深夜の売店には、自動ドアの開閉音と、飲料棚の冷気が流れる音しかなかった。
恋愛

【短編小説】金魚すくいの片想い

夏の夜の空気は、どこか懐かしい匂いがする。浴衣の裾を気にしながら、ユイは祭りの屋台通りを歩いていた。提灯の光、焼きそばの匂い、人のざわめき。それらが入り混じって、心を落ち着かせるどころか、ますます高鳴らせた。
ミステリー

【短編小説】砂漠に消えた影

昼間の熱気がまだ残る砂の上に、それはあった。調査隊が砂漠の南端に設営したキャンプから少し離れた場所。風の通り道のはずの砂丘に、一直線に伸びる“足跡”が浮かんでいた。左右均等、やや深めのくぼみ。問題は、その足跡が“片道”しか存在しないことだった。
ドラマ

【短編小説】ネオンの隙間で

夜の帳が下りるころ、アユミはネオンに照らされたビルの地下へと降りていく。そこは繁華街の片隅にある小さなバー「ラピス」。カウンター越しに、笑顔を貼りつける仕事を始めてもう五年になる。
SF

【短編小説】月面マーチ

観光化が進んだ月面都市〈ルナ・シティ〉では、地球からの旅行者が銀色のドーム内で無重力スポーツやクレーター・クルーズを楽しんでいた。その喧騒から遥か離れた場所──「裏側の谷」は、誰も訪れない静寂の地だった。
日常

【短編小説】サンドキャッスルの約束

午後三時、団地の向かいの公園にある砂場。そこに、毎日きっかりの時間に小さな男の子が姿を見せる。名前はユウト、幼稚園の年中組。お気に入りの青いスコップを手に、誰よりも真剣な顔で砂と向き合う。