日常【短編小説】今日のごはんは、なんにする? 朝の光がレースのカーテンをすり抜け、キッチンにやさしく降り注ぐ。真理は小さく伸びをしながら、炊飯器のふたを開けた。「んー、今日もいい匂い」隣の椅子では、3歳の息子・光が、お気に入りのスプーンをにぎりしめて座っている。 2025.06.10日常
ファンタジー【短編小説】星橋を渡る夜 七夕の夜、少女・ナギは一人、神社裏の小さな丘で天の川を見上げていた。笹飾りもない短冊もない七月の風景に、願いごとを託す気にもなれずにいた彼女は、どこか空虚な気持ちで空を見つめていた。 2025.05.19ファンタジー
ミステリー【短編小説】手紙には書かれていない 春の引っ越しを目前に控えたある日、菜月の家に一通の古びた手紙が届いた。封筒は黄ばんでおり、消印はかすれて読めない。だが、差出人欄には何も書かれておらず、宛先だけがはっきりと——「朝倉菜月様」と記されていた。 2025.05.14ミステリー
ファンタジー【短編小説】流れ星の滝へ 夜空を見上げるたび、リクトは妹の咲のことを思い出す。彼女は、生まれつき体が弱かった。病院のベッドで過ごす日々の中でも、咲はいつも空を見ていた。「流れ星を見たら、お願いするの」と笑って。だが、流れ星はそう簡単には現れないし、願いはなかなか叶わない。 2025.05.13ファンタジー
ファンタジー【短編小説】水溜まりの向こう側 雨が止んだばかりの朝、通学路にはいくつもの水溜まりができていた。小学五年生の理央は、いつものようにランドセルを背負い、跳ねるように水たまりを避けながら歩いていた。けれど、角を曲がった先で、ふと足が止まった。 2025.05.09ファンタジー
ドラマ【短編小説】葡萄の声を聞く 父が亡くなったと連絡を受けたとき、渚はパリのレストランでワインを注いでいた。ソムリエとして、誰よりも早く香りを読み、誰よりも深く味わいの奥行きを伝える。それが、彼女の仕事だった。だが電話の向こうで、実家の隣人が語る言葉には、どこか現実味がなかった。 2025.05.05ドラマ
SF【短編小説】星間特急アルクトゥルス 地球最後の夜、星間特急「アルクトゥルス」は発車した。腐敗した大気、干上がった海、崩壊した都市――かつて青く輝いた星は、今や滅びの音を立てていた。 2025.05.01SF
ドラマ【短編小説】おふくろの味、ふたたび 東京・銀座のフレンチレストランで、圭吾は日々、神経を張り詰めていた。ミシュラン星付きシェフ。予約は半年待ち。妥協のない料理とサービス。それが彼の誇りであり、生き方だった。そんな彼の元に、ある日一本の電話が入る。母が倒れ、入院したという知らせだった。 2025.04.07ドラマ
ドラマ【短編小説】味の記憶 駅から少し外れた路地裏に、「紅龍園」という中華料理店がある。赤い提灯と色あせた暖簾が目印で、決して派手ではないが、昼時ともなれば常連客で賑わう。ここは、地元に根... 2025.03.31ドラマ
ドラマ【短編小説】父の背中 リビングには静寂だけが満ちていた。テレビはついているが、誰も見ていない。父は黙って新聞を広げ、娘の美咲はスマホをいじりながら、心ここにあらず。母が亡くなって三年... 2025.03.26ドラマ