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ファンタジー

【短編小説】栗の精、こっくりさん

秋の陽射しが斜めに降りそそぐ山道で、少女・結は夢中で栗を拾っていた。祖母の家の裏山。今年も栗の季節がやってきて、毎年恒例の“栗拾い遠足”がはじまる。栗の毬(いが...
ドラマ

【短編小説】ピントの合う場所で

人気動画クリエイター、美波は今、田舎町の小さな農道に立っていた。東京の喧騒を離れ、「癒しと再発見」をテーマにした新シリーズの撮影のため、スタッフと共に地方を訪れ...
ドラマ

【短編小説】奇跡のあんパン

商店街の端にひっそり建つ「みずきベーカリー」は、昔ながらのパン屋だった。レンガの外壁、手描きの看板、ショーケースの中のパンも素朴な丸い形。だが、今では早朝にも関...
ドラマ

【短編小説】ポケットの中の五百円玉

夜のコンビニの蛍光灯が、地面に不自然な白さを投げていた。悠はその下に立ち、扉の前で立ち止まった。腹が減っていた。昼から何も食べていない。いや、昨日のカップ麺を最...
ファンタジー

【短編小説】かき氷と風の精

夏休み、晴人は祖父の住む山間の村へやってきた。東京の暑さとは違い、朝の空気は涼しく、蝉の声が遠くの林間から淡く響いている。祖父の家の縁側には古いかき氷機が置かれ...
ドラマ

【短編小説】赤土の誓い

空は焼けた鉄のように乾ききり、地面はひび割れた瓦のように崩れていた。干ばつ続きのこの村では、もう何年も雨らしい雨が降っていない。青年・剛志は、朝から畑に立ってい...
ドラマ

【短編小説】最後のジャンプ

水族館の朝は、静かな水音から始まる。開館前、まだ誰もいないプールサイドに立つ沙織は、すでにそこに浮かぶ一つの影に目を細めた。イルカの「リーフ」。灰色の背中に白い...
ドラマ

【短編小説】一粒の誓い

田植えの季節、山あいの村に水が流れ始めると、達也は祖父の遺した小さな田んぼのあぜ道に立った。二十代半ば、都市での会社勤めを辞め、家業である米農家を継いだばかり。...
ドラマ

【短編小説】風を背負って

春先の野を抜ける風は、どこか父の背中の匂いがした。若き行商人・タケルは、父の形見の荷車を引き、ひとり道を歩いていた。荷車には布、器、塩、薬草、村から村へと運ぶ品...
日常

【短編小説】今日も処方せん通りに

朝八時半。白衣に袖を通すと、気持ちが少しだけ引き締まる。調剤薬局「みなと薬局」の薬剤師・涼子は、開店前の店内を一巡しながら、棚の薬をひとつひとつ確認する。ピッと...