学校

恋愛

【短編小説】雨音にとけて

夏休み直前の午後、雲は急に厚く重くなり、雷鳴とともに夕立が教室を襲った。高校生の涼(りょう)は窓から激しく降る雨粒を見つめていた。学校は瞬時に停電し、蛍光灯がす...
日常

【短編小説】八月のラジオ体操帳

夏休みの朝5時半。蝉の声もまだ弱々しく、町は眠りの残像をまとっていた。小学四年生の悠真は、冬の布団より逃げたいほどラジオ体操が苦手だった。でも今年は違った――。...
SF

【短編小説】7秒後の未来

風が冷たくなり始めた秋の放課後、中学二年の颯太は、商店街の奥にひっそり佇む古道具屋で奇妙な腕時計を見つけた。金属の風合いが時代を感じさせるその時計は、どの針も7...
ドラマ

【短編小説】夏空の下で、君と

セミの声が空を震わせるように響いていた。高校三年の夏、圭は野球部を引退したばかりだった。甲子園出場は果たせなかったけれど、ベンチで仲間と見上げたあの空は、たしかに忘れられない眩しさを持っていた。
SF

【短編小説】時の郵便屋

春の午後、高校生の奏のもとに、奇妙な手紙が届いた。宛名は自分。差出人不明。封筒は薄く色褪せていて、まるで長い時間を旅してきたようだった。だが、何よりおかしいのは、消印の日付だった。
ミステリー

【短編小説】最後のスケッチ

放課後の美術室には、絵具の匂いと静けさが満ちていた。高校二年の遥香は、今、美術部の卒業制作に取り組んでいた。題材は、学校の裏手に残る旧校舎。今では使われておらず、生徒の出入りも禁止されているが、取り壊しが決まったと聞いて、彼女は“最後の記録”としてスケッチを描くことにした。
ミステリー

【短編小説】昼寝部屋の罠

哲が「昼寝部屋」の存在を知ったのは、五月の蒸し暑い午後だった。大学の講義と課題に追われ、眠気に負けて図書館の隅でうとうとしていたとき、同じゼミの吉田がこっそり教えてくれた。
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【短編小説】合格発表のあとで

冬の朝は、図書室の窓ガラスがうっすらと曇っていた。高校三年の優斗は、受験勉強のために、ほぼ毎朝開館と同時に図書室へ向かった。お気に入りの席は、窓際の左端。日が当たりすぎず、静かで、集中しやすい場所。
日常

【短編小説】カステラ、三時の奇跡

その日、美月はすっかり打ちのめされていた。中学校の中間試験、手応えは最悪。特に数学の答案用紙は、まるで知らない言語が並んでいるかのようだった。
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【短編小説】春、君にだけ咲く

春風が頬を撫でる午後、大学進学のために見知らぬ街に越してきた瑞希は、部屋のカーテンが足りないことに気づいた。歩いてすぐの商店街をうろうろしていると、ふと目に入ったのが、小さな花屋だった。ガラス越しに見えたのは、淡いピンクのラナンキュラスと、その隣で花を整える青年の姿。