ほっこり

ドラマ

【短編小説】潮の道しるべ

夜明け前、海はまだ眠っているかのように静かだった。真司は父の形見のゴム長靴に足を通し、小さく息を吐いた。冷たい風が頬をかすめ、潮の匂いが鼻先に染み込む。「親父も...
ドラマ

【短編小説】風を読む男

滑走路を吹き抜ける風は、いつだって何かを運んでくる。元ベテランパイロットの圭一は、飛行学校の訓練教官として、静かな日々を送っていた。制服を脱いで五年。彼はもう、...
日常

【短編小説】お昼寝タイム、はじまりました。

午後二時になると、真理のアラームが鳴る。「そろそろ、横になろうかな」在宅勤務になって三か月。毎日続くオンライン会議と、終わらぬ業務の山。慣れないデスクワークに肩は凝り、目はしょぼしょぼ。そんな彼女のささやかな日課が、午後の三十分だけ取る“お昼寝タイム”だった。
ドラマ

【短編小説】向日葵の名前

夏の空はどこまでも高く、蒼く、まぶしかった。祖父の葬儀が終わり、陽太は久しぶりに帰郷した実家の縁側に腰を下ろしていた。蝉の声が、まるで時間を巻き戻すように遠くから響く。
恋愛

【短編小説】渚町サンセット

最寄り駅からバスで十五分、さらに坂道を下ると、渚町が見えてくる。海と山に挟まれた、どこか時間の流れがゆるやかな町。
日常

【短編小説】今日のごはんは、なんにする?

朝の光がレースのカーテンをすり抜け、キッチンにやさしく降り注ぐ。真理は小さく伸びをしながら、炊飯器のふたを開けた。「んー、今日もいい匂い」隣の椅子では、3歳の息子・光が、お気に入りのスプーンをにぎりしめて座っている。
ファンタジー

【短編小説】糸あやつりの国

廃墟のような人形劇場は、町外れの丘の上にぽつりと残っていた。古びた木の看板には、かろうじて「アルカ劇場」と読める文字。風に吹かれて軋むその音は、まるで誰かが幕を引く音のようだった。
ドラマ

【短編小説】赤い星の下で

砂嵐の向こう、赤く沈む太陽が遺跡の影を長く伸ばしていた。カイはその風景を、まるで何度も見た夢のように黙って見つめていた。ベテランのトレジャーハンターとして、彼は世界中の失われた遺物を追い求めてきた。
日常

【短編小説】月曜日のカレーライス

月曜の夕方、遥の部屋には決まってカレーの香りが漂う。一人暮らしを始めて半年。大学の近くにある、風呂トイレ別・築15年のアパートが、彼の「新しい家」になった。
ドラマ

【短編小説】星降るベランダで

遥がベランダで星を眺めるようになったのは、小説家を目指すようになってからだった。夜の空は、物語を考えるための静かなページだった。仕事から帰ってきて、インスタントのコーヒーを片手に、ノートを膝にのせて星を見上げる。それが、彼女の小さな習慣だった。