家族

ミステリー

【短編小説】手紙には書かれていない

春の引っ越しを目前に控えたある日、菜月の家に一通の古びた手紙が届いた。封筒は黄ばんでおり、消印はかすれて読めない。だが、差出人欄には何も書かれておらず、宛先だけ...
ファンタジー

【短編小説】流れ星の滝へ

夜空を見上げるたび、リクトは妹の咲のことを思い出す。彼女は、生まれつき体が弱かった。病院のベッドで過ごす日々の中でも、咲はいつも空を見ていた。「流れ星を見たら、...
ファンタジー

【短編小説】水溜まりの向こう側

雨が止んだばかりの朝、通学路にはいくつもの水溜まりができていた。小学五年生の理央は、いつものようにランドセルを背負い、跳ねるように水たまりを避けながら歩いていた...
ドラマ

【短編小説】葡萄の声を聞く

父が亡くなったと連絡を受けたとき、渚はパリのレストランでワインを注いでいた。ソムリエとして、誰よりも早く香りを読み、誰よりも深く味わいの奥行きを伝える。それが、...
SF

【短編小説】星間特急アルクトゥルス

地球最後の夜、星間特急「アルクトゥルス」は発車した。腐敗した大気、干上がった海、崩壊した都市――かつて青く輝いた星は、今や滅びの音を立てていた。人々は次々と脱出...
ドラマ

【短編小説】おふくろの味、ふたたび

東京・銀座のフレンチレストランで、圭吾は日々、神経を張り詰めていた。ミシュラン星付きシェフ。予約は半年待ち。妥協のない料理とサービス。それが彼の誇りであり、生き...
ドラマ

【短編小説】味の記憶

駅から少し外れた路地裏に、「紅龍園」という中華料理店がある。赤い提灯と色あせた暖簾が目印で、決して派手ではないが、昼時ともなれば常連客で賑わう。ここは、地元に根...
ドラマ

【短編小説】父の背中

リビングには静寂だけが満ちていた。テレビはついているが、誰も見ていない。父は黙って新聞を広げ、娘の美咲はスマホをいじりながら、心ここにあらず。母が亡くなって三年...
ドラマ

【短編小説】さよならの箱

陽菜は部屋の真ん中に座り込み、山積みになった段ボール箱を見つめていた。「これが全部片付いたら、もうここには戻らないんだな……」 結婚を機に、この町を離れることに...
日常

【短編小説】おかえりの合図

夕暮れの街を、由紀は足早に歩いていた。冷たい風が頬を撫でる。時計を見ると、もう夜の七時を過ぎている。今日も帰りが遅くなってしまった。 「優斗、大丈夫かな……」 ...