ファンタジー【短編小説】蜜の森の約束 森は甘い香りに満ちていた。朝露をまとった草の間をすり抜けるように、黄色い羽音が響く。村のはずれに広がるその深い森は「蜜の森」と呼ばれていた。古くから、不思議な蜜... 2025.06.26ファンタジー
ドラマ【短編小説】潮の道しるべ 夜明け前、海はまだ眠っているかのように静かだった。真司は父の形見のゴム長靴に足を通し、小さく息を吐いた。冷たい風が頬をかすめ、潮の匂いが鼻先に染み込む。「親父も... 2025.06.24ドラマ
ドラマ【短編小説】赤い星の下で 砂嵐の向こう、赤く沈む太陽が遺跡の影を長く伸ばしていた。カイはその風景を、まるで何度も見た夢のように黙って見つめていた。ベテランのトレジャーハンターとして、彼は世界中の失われた遺物を追い求めてきた。 2025.06.06ドラマ
日常【短編小説】月曜日のカレーライス 月曜の夕方、遥の部屋には決まってカレーの香りが漂う。一人暮らしを始めて半年。大学の近くにある、風呂トイレ別・築15年のアパートが、彼の「新しい家」になった。 2025.06.05日常
ドラマ【短編小説】星降るベランダで 遥がベランダで星を眺めるようになったのは、小説家を目指すようになってからだった。夜の空は、物語を考えるための静かなページだった。仕事から帰ってきて、インスタントのコーヒーを片手に、ノートを膝にのせて星を見上げる。それが、彼女の小さな習慣だった。 2025.05.28ドラマ
ファンタジー【短編小説】泡の国のティア ある夏の午後、ミナは庭でシャボン玉を吹いていた。光に透ける泡が空に舞い、風に乗ってくるくると踊る。ひとつ、ふたつ、と数えていくうちに、ミナは目を見張った。 2025.05.26ファンタジー
ミステリー【短編小説】氷上の記憶 風が止み、雪が舞い落ちる湖面は、まるで静寂そのものだった。冬の朝、町外れの凍った湖で、ひとりの少年が湖底に何かを見つけた。それは、半透明の氷の中に閉じ込められた、片方だけの古いスケート靴だった。 2025.05.22ミステリー
ドラマ【短編小説】空をつくる手 朝六時の空は、まだ鈍く灰色に濁っていた。都市再開発の中心部、建設中の超高層ビルの現場では、すでにクレーンが唸り、鉄骨が空を切っていた。その足元、ヘルメットと作業着に身を包んだ青年が、深呼吸ひとつして足を踏み出す。 2025.05.17ドラマ
日常【短編小説】日向の縁側 春休みの初日、ユイは祖母の家の縁側に座っていた。母に「たまには空気の違う場所でのんびりしてきなさい」と言われて、渋々やってきた田舎町。スマホの電波も不安定で、友達と連絡を取り合うのもままならない。最初の一日は、ただ時計の針を眺めていた。 2025.05.15日常
ドラマ【短編小説】土の声を聞く日 春のはじめ、山村の風はまだ冷たかった。過疎化が進み、人影もまばらなこの村で、浩一はただひとり畑を耕し続けていた。かつては祖父と共に働いた土。祖父が亡くなってから二年、誰も戻らない村で彼だけが“土”に残る意味を信じていた。 2025.05.12ドラマ