不思議な話

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【短編小説】栗の精、こっくりさん

秋の陽射しが斜めに降りそそぐ山道で、少女・結は夢中で栗を拾っていた。祖母の家の裏山。今年も栗の季節がやってきて、毎年恒例の“栗拾い遠足”がはじまる。栗の毬(いが...
SF

【短編小説】0.0001の神様

「……え、満点?」航は成績表を見つめたまま、瞬きが止まった。数学のテスト——それも、学年でもっとも難しい範囲の試験で、自分の名前の横に“100点”の数字が並んで...
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【短編小説】マンホールの王

下水道点検員の和馬は、古い街区の調査任務に就いていた。その日も彼は、指定された老朽化地域のマンホールを開け、重たい蓋を押しのけて地下に降りた。だが、奥へと進むう...
ミステリー

【短編小説】映らない水面

秋の澄んだ空気のなか、悠はひとり山を登っていた。舗装された旧道は観光客で賑わっていたが、登山に慣れた彼は、ふと気まぐれに脇道へそれた。木々の間に隠れるように伸び...
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【短編小説】星砂の子守歌

赤い火星の地下都市〈ヴェルディア〉では、大地の代わりに人工の光が天井を照らし、重力の制御装置が地上の代わりを果たしていた。地上に出られず育つ“地下世代”の子ども...
ミステリー

【短編小説】閉店前のレコード屋

真夜中の帰り道、山沿いの薄暗い道を走る老夫婦・洋子と洋一は、ランプの灯りに誘われて一軒の小さなレコード屋に立ち寄った。看板には「閉店間近」の文字。誰もいないはず...
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【短編小説】こびとの庭

日曜日の午後、風がやさしく撫でる歩道の隅に、ひとつだけ見慣れない小さな花が咲いていた。透き通るような淡紫色と、まるで星の欠片を閉じ込めたような真ん中の光。その花...
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【短編小説】かき氷と風の精

夏休み、晴人は祖父の住む山間の村へやってきた。東京の暑さとは違い、朝の空気は涼しく、蝉の声が遠くの林間から淡く響いている。祖父の家の縁側には古いかき氷機が置かれ...
ドラマ

【短編小説】ログインは、真夜中に

スマートフォンの通知音が、真夜中の静寂を破った。◇◇◇ さん(以下 A)からのダイレクトメッセージ:「こんばんは。今、流れ星のツイート見ましたか?」深夜、SNS...
ミステリー

【短編小説】第二船倉の記録

遠洋漁業船「第八光翔丸」が鹿児島港を出たのは、秋も深まる十月の初旬だった。乗組員は全員で十人。うち新人が一人。大漁旗をたなびかせ、長い航海に出る準備は整っていた...